監督 張徹(チャン・チェ)
脚本 倪匡 & 張徹
アクション監督 劉家良 & 唐佳
出演 姜大衛(デヴィッド・チャン) 傅聲(アレクサンダー・フーシェン) 李麗麗(リー・リリー) 盧迪 韋弘 利榕傑 松岡稔
1974年香港ショウブラザーズ
これもフーシェン初期出演作。
『警察』と違って、スターのデヴィッド・チャンと共に、ほぼ主役といっていいでしょう。映画祭の新人賞も獲っている。
お話は、張徹による、現代の(当時の)まだ将来の定まらぬ若者たちの青春映画。
といっても、『香港ラヴァーズ 男と女』みたいに、リアルに厳しい現実を描いているわけではありません。
冒頭は、成功した元若者たちが久しぶりに再会する、という場面で、そこでのせりふは、すべてネタばらしになっている、というちょっと驚く構成で、つまり最初からハッピーエンドが待っている前提であり、気楽な気持ちでみていけます。
しがない看板描きだが画家になることをめざしているデヴィッド・チャンと、似たような境遇の、まずしい若者たち。その仲間へとびこんだ、というか、デヴィッド・チャンに惚れこんでくっついてきたフーシェン。彼はほんとは大金持ちの息子なのだが(まんまな役ね)それを隠してデヴィッド・チャンと行動を共にすることで、しあわせを感じている。デヴィッド・チャンには、ローン・シャークに追われる恋人リリーさんがいる。彼女を救うためにフーシェンがある作戦を行うが、これをきっかけに、若者たちはやくざがらみの事件に巻き込まれる・・・。
基本的に最初から最後まで明るく、若者たちがじゃれあってるのんきな話。
見所としては、いつものように唐佳&劉家良が動作指導のアクションシーンおよび、デヴィッド・チャンとフーシェン、ふたりのスターの関係でしょう。
張徹世界においては、フーシェンにはやっぱりお兄さんが必要なようです。
かつ、フーシェンは、穢れを知らぬ清い子供であるらしい。
どこにでも金魚のフンのようにデヴィッド兄貴にくっついていくフーシェン、看板描きの仕事も手伝い、生まれてはじめて労働というものを行ったあと、「あー腹へったよー」というと、デヴィッド兄貴が、水とパンをくれる。
「このパンうまいー!どこのパン屋の?」
「こんなのどこにでも売ってるパンだよ。腹が減ってるからうまいのさ」
とか、デヴィッド兄貴に世間勉強をさせてもらい、とても幸せそうなフーシェン。
全編にわたって、フーシェンの可愛らしさプロモーション映画になっていますが、とくにこの場面は、あまりの邪気のなさ明るさに、いや、まいったよ。
デヴィッド兄貴も、フーシェンの頭をくしゃくしゃっとやったりして、可愛がっている様子。
ふたりともとっても楽しそうです。
しかし、そんなフーシェンに、どうしてもわからないことがあった。
ローン・シャークからにげていたデヴィッドの恋人リリーさん、借金を返せなければ、身を売るしかないわけです。
しかしその事情をどうしても察知できないフーシェン!
この、デヴィッド、リリーさん、フーシェンの会話が、ちょっと長いけどおもしろすぎ・・。はっきりと「売春婦」という言葉をきくまで、全然話を理解しないフーシェン坊ちゃま!
この場面をみて、『続・嵐を呼ぶドラゴン』での鉄の体をつくる修行に耐えるための前提条件や、『洪拳小子』で妓楼に上がったのにブランコにばかり興じる小子の姿を思い出さずにはいられませんでした。
絶対モテモテだったはずのフーシェン本人は、こういう役をふられることをどう思ってたんでしょうねえ。
デヴィッド・チャンのキャラクターも、なかなかおもしろいです。
大志を抱く、誇り高い若者ですが、茶目っ気もたっぷり。
給料が出たばかりのときに、みんなをひきつれ高級な店で散財。
当店ネクタイ着用が必要ですが、と言われると、みんなは用意してきたネクタイをカジュアルウエアの上に形ばかり巻き、デヴィッドは靴ひもで代用!
最終的に、手持ち金がかなりぎりぎりだったため、チップもおかずに退散しますが、最後までいたずらっ子みたいな態度。
かと思えば、いきなりリリーさんの【上半身を裸にし】て肖像画を描き始めたり。
このシーンで、バックに、張徹作詞の歌が流れるのですが、これが、映像とイコールの内容で、「♪俺の部屋にはあかりもないが」→電気のきえた天上灯が映る、「♪月の光があるさ」→窓からみえる月が映る、といった具合。「♪なにもないけど 俺には絵筆があるさ」・・素敵。
若者仲間には、少林寺仲間のビリー・タン君もいるし、クレジットで特別介紹となっている利榕傑という人もいる。DVDジャケットに映っているのはフーシェンかと思ったらこの人だった。彼のおっちょこちょいというかちょっとどうかと思う行動のおかげで後半のごたごたが起きるのだが、明るく許すフーシェン坊ちゃま。まあとにかく、最初からハッピーエンドがきまってますから。
やくざ側の面々の中に、日本人に見える人がいる、と思ったら日本人だった。松岡稔・・という名に聞き覚えはないが、日本のテレビで見たことあるような気はするなあ。
アクションシーンはどれもなかなか痛快でしたが、それというのも、フーシェン坊ちゃまはお屋敷内のトレーニングルームで、デヴィッドたちは空き工場の一角にトランポリンなどを持ち込んだ自前のジムで、鍛錬をおこたらないからってことらしい。
当時のファッションを身につけ(スリムなラインだが裾はひろがったボトム)、カンフーの素養もあるってことで、敵も味方も、皆様、かっこいいです。
現代劇ですがセットが多いようにみえます。デヴィッドの住みかの近くは、土瓜湾じゃないかと思うが違うだろうか。
この頃の香港は、景気がよかったんですかね。
基本的にスター映画だから、社会の実態と乖離している可能性もあるけれど、絶対に社会矛盾は何らか存在してたはずだけど、それでも、一応昇り傾向だったのでは・・と思いたくなるほど、上機嫌で楽しい映画でした。
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