1950年の作品だが1930年代っぽい。と学芸員の人が言っていた。
千恵プロで、千恵蔵、伊丹万作、稲垣浩で明朗時代劇をたくさんつくっていたそうだ。
伊丹がなくなり、彼の生前作品を再構成し「伊丹万作遺稿」として作品をつくった稲垣浩。
国立映画アーカイブならではの上映ではないだろうか。ききとれないところもたくさんあったけど、良かった。最初の方のシークエンスがいくつかとんでいて60分少々。
「鴛鴦歌合戦」にも出ているし、千恵さんは明朗時代劇のスターだったのね。雷蔵さんも明朗時代劇ではとてもかわいくて幸せとのんきを思い切り演じてたなあ。
旅の途中で見かけた猫が気に入ったけど、それ以前に身投げをしようとしていた娘(岸旗江。彼女とてもよかったなあ)を助ける千恵蔵さん。でもやっぱり猫がきになりもどってまで猫をひろってくる。そのにゃんこを懐につっこんだり、おふとんで一緒に寝たり、かわいいっちゃありゃしない。そして「赤西蠣太」にも猫が出ていた、て学芸員の人にいわれて思い出したわ。
成り行きでやくざの親分のうちに飼われることになる千恵蔵さんと月形龍之介の横田横蔵。ついにライバル組との果し合いをすることになり、それがイヤで策をたって必死に武力対決を回避しようとする千恵蔵。そのときのおっかけっこが、道から酒場の中を通り抜け裏口からまた道へ、というのを3回くらいやってたけど千恵さんもその他おおぜいも三回走ったのかしらねえ。で、そのおいかけっこの最中から、突然、千恵蔵の逃亡生活がはじまるのが不思議な感じだった。いままでのは前座でほんとにいいたいことはこれ・・?みたいな。「にげてさえいればなんとかなる」。そもそもやくざの小競り合いを遠くからみているお百姓さんたちとの会話を考えても・・。
でも最後は、ほのぼのハッピーエンド、恋人(にもなっていなかったけど)は待っていてくれたのでした。
横田とともにやくざにかかえられると、おそろの着物(一家の紋入り)を着せられるのだけど、横田は濃い色に紋、千恵さんは白い生地に紋。その着物で、うっかり袖を焦がしてしまい、のあとのシーンではちゃんと違う色のそでをつけていました。
これには橘公子さんがきのふれたお嬢さんの役ででていました。あれは・・なにか意味があるのかなあ。ちなみに香川良介もでていてああ大映だった。香川良介は千恵プロにもいたとな。
橘ハム子さん(と撮影所時代の誰かが言ってたのが誰だか思い出せない)の一代記とかききたかったなあ。
学芸員さんの話からメモ。違っていたらごめんなさい。
・1949年10月、映倫は自ら時代劇は総製作数の25%とすると自粛をきめた。
まだ思い切り時代劇はつくれていない時代だったにもかかわらず、それまでに結構つくってしまったことへの反省?らしい。この映画は50年の映画。そして51年8月、自粛はやめることにしたらしい。
いずれにしても、この映画では、刀は抜くが斬り合いはない。
・ダンセイニの「IF」が元。伊藤大輔が戯曲化に苦労していたのを伊丹万作が引き取った。その結果?「昔を今に」という脚本ができた。
・伊丹万作の戦前作品で、この作品に引用されているものは、絵本武者修行、逃げ行く小伝次、赤西蠣太。
あと、欠落している部分は、
【主な欠落は巻頭の、「幸福の印籠」を入手した主人公が喧嘩で牢に入り、就職口を逃す件り。】とのこと。
https://www.nfaj.go.jp/exhibition/hakkutsu202204/#ex-60457これ、東映、と書いてあった気がしたけど東横映画だった。